ミュージカル刀剣乱舞〜結びの響、始まりの音〜感想 東京凱旋公演
刀ミュむすはじの大千穐楽が終わってしまった〜〜!!!今回はロスという感じではなくて、なんかまだTDCに行ったら上演してる気がするような、ふわふわした感覚。
むすはじの感想・解釈は東京公演終わってすぐ投げたけど、東京凱旋でも気づきがあったので、また一から書きます。前記事はこちら!
「ミュージカル刀剣乱舞〜結びの響、始まりの音〜」感想 - 壁に向かって話し続ける
まず、時間遡行軍の解釈について。「物語なき」=「語られることがない」ということだとやっと気づいた…… 狭義の物語はあったとしても、それを語るモノがいないと「物語」にはなり得ない。刀ミュのこれまでのタイトルが人によって語られることを意味していた(阿津賀志山「異聞」、幕末天狼「傳」、三百年の「子守唄」、俳句の一節としての「つはものどもがゆめのあと」)のも関係あるよなこれ。
これに気づいたのは1部の巴ソロ曲なんだけど、歌詞を載せている方がいたので紹介します。
誰も知らない 俺の通った道など
地図にも残らない 俺の辿った軌跡など
それは 語り持たぬものたちの 道無き道
語り持たぬモノたちの道なき道…… 誰かの物語が綴られる音を聞いているだけの、ほかと溶け合って個として認識されない存在であった巴ちゃん。絶対最初の頃は他の6振りに多少の嫉妬心あったと思う。幕末はとくにアイデンティティの塊だもんな……
刀剣乱舞で「名もなき力 行くぞ いざ覚悟」と歌っているように、物語のある刀だらけの本丸に顕現したことで、物語がないということは強烈な物語となる。 本当に巴ちゃん応援したいキャラだよね…… ある意味主人公にとても適してる。 特別な物語作ろうね巴ちゃん〜!♡(いきなり2部)
ともすれば寂しげになりそうな巴ちゃんのキャラクターが暗くならなかったのは、はるちゃんのHAPPY POWERもあるんだろうな〜。役者の色を混ぜ込んで新しくキャラクターが生まれるのが2.5の醍醐味だな〜と思う。
巴ちゃんソロ曲に戻って、
降り埋むは無数の枯れ落ち葉
って歌ってたのは明らかに大木の曲とのリンクだよね……。終わった過去の物事があって、でも他のディテール(=枯れ落ち葉)に隠されて語られない、ってことなのか。
それと最後の
夢 さらさら
この単語、どうやら古語らしい。
打ち消しを伴って、「決して、少しも」という意味。この頃の巴ちゃんはまだ自分の物語がないことを悲観してるから「ない」という断定を強めるのと、言葉遊びと。つはゆめの「ゆめのあと」を彷彿とさせるような流石の言葉選び。
らぶフェスとかで存在の曖昧な平安刀たちと絡む巴ちゃんが観たい…………
その2!土方さんについて。本人も分かってるように、彼は組織の中で"現実"を担当する人。むすはじを観てからユメひとつを聴くと、やっぱりこの曲は土方さんの歌ではないな〜と思う。ユメひとつって新撰組隊士の思想の集合体みたいな詞だから切り分けることもナンセンスかもしれないけども。
ユメひとつ - 刀剣男士 team新撰組 with 蜂須賀虎徹 - 歌詞|GYAO!
五稜郭でのシーン、この戦いの大義を掲げていた(「幕府の臣にも気概のある者がいたことを証明するのだ!」)のは榎本さんで、土方さんは「戦は戦だ」と言っていたように、彼は戦いに思想を持ち込んでいなかった。彼が持っていたのは「自分の命をどう使うか」という美学。
時代の幕引きを 鮮やかに彩れ
上でリンク載せた方のぷらいべったーで2部の新撰組+榎本さんの曲の歌詞振りも載ってるのでぜひ見てほしいんですが、これ、互いに歌いかけてない……?
榎本:放つ一太刀 稲光りよりも速く
島&中:時代の幕引きを
榎本:鮮やかに彩れ
これ絶対土方さんに歌いかけてるじゃん……。そして大サビのこれですよ。
榎本:風を切れ 走れ 立ち止まるな
運命 受け入れしものよ
土方:空に舞え 踊れ!
命燃やせ この身砕け散るまで
多くは語るまい。土方さんと榎本さん、サイコーのブロマンス大賞2018受賞です。
最後!これは序章の曲と天狼傳2部の「プロローグ」について。
プロローグ 歌詞【和泉守兼定,堀川国広】 | 歌詞検索UtaTen(うたてん)
いや比べるよな……。もともとプロローグはめちゃめちゃ好きで、それは刀剣乱舞のメタシステムをうまく表してる詞だからだった。でもここにきて新しい意味が読み取れることになろうとは……。
ずっと降り続いた雨は止んだ 今何をすべきか
思えば天狼傳では印象的に雨のシーンを使っていた。DVDのチャプター画面でも小雨の音がするしね……
でもむすはじで象徴的な役割を担う銃や大砲、火薬は雨だと使用できない。この対比しみじみとすごい……。
これはほんの些細な序章
いつか誰かに繋ぐための短いプロローグ
これ、まんま土方さんの美学じゃないですか……
これはたった一編のストーリー
君が誰かに語ることで繋がるプロローグ
と、と、巴ちゃん……
描かれる誰かの描写のひとつに収まらずに
これ、中島くんと遡行軍では……
いやもうこれ全部計算ずくだったらすごくない?!何を信じればいいのか分からん!自分の解釈すら信じられない!
あと前のエントリで"月、星、風、波"についてちょっと書いたけど、そこの解釈は普通にむすはじ作中だけでも完結できたね。月を見て歌を詠む土方さんと島田さん。天狼星にまつわるもろもろ。大木の曲のサビ、「同じ風に吹かれよう」。北へ向かう船を運ぶ波。
この4つのモチーフ、今までの曲にもチラチラ出てくるのがニクい。もちろんプロローグにも。
小さな不安 笑うように 風がざわめいた
序章の歌の一番曲が高まるところ、
星は瞬き 月は満ち欠け
風は帆を立て 波は押し寄せる
変わるもの 変わらないもの
生まれるもの 朽ちるもの
始まりと終わり
刀ミュシリーズの第1部完結としてこれほど適切な歌詞ありますか!?天才。
そしてここ、作中の戦闘シーンに流れてた新BGMが伴奏のメロになってる。終わらせるための戦、始めるための戦……人々が生きた"証"って、これほどドラマティックなんだね。
こんな感じで、刀ミュが我々の予想以上に長いスパンでの作品づくりをしていた話でした。(?)御笠ノ大先生の脚本が好きすぎるので一生足向けて寝られません。サンクスフォーギビング。
わたしは第三次阿津賀志チケット戦争の勝利を祈願しつつ、爪と牙を研ぎ澄ますことにします。では!